時空をも歪めすべてを飲み込むブラックホール――。このブラックホールに人間が落ちてしまったら一体どうなるのか? 跡形もなくなってしまうに違いないというのがこれまでの定説であったが、最新の学説ではなんとブラックホールに吸い込まれた人間の身体はホログラムになって残るというのだ。


■「ブラックホール情報パラドックス」の解決に取り組む最前線の物理学者たち

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ブラックホール 画像は「Wikipedia」より

 昨年のSF映画『インターステラー(Interstellar)』では、主人公がブラックホールに吸い込まていくシーンが描かれたが、もちろん想像の域を超えないイメージ描写(しかも5次元の存在に守られている状態)であった。ネタバレになるのでこれ以上の言及は避けるが、これまで多くの科学者はブラックホールに吸い込まれてしまった物質はおそらくすべて崩壊してしまうだろうと考えてきた。SF映画やSFアニメで描かれてきたブラックホールも、たいていの場合は一度吸い込まれれば死を意味する禍々しい存在として登場していることが多いだろう。

 しかし最新の研究では、ブラックホールに吸い込まれた人間はホログラムになって存在し続けるかもしれないと指摘しているのだ。

 ここでいったん1970年代のブラックホール研究に遡る。「車椅子の物理学者」として著名なスティーヴン・ホーキング氏は1974年、ブラックホールから物質が逃げ出して最終的にブラックホールが蒸発してなくなる可能性を主張している。ちなみにブラックホールから絶えず漏れ出るこの放射熱を「ホーキング輻射」と言うが、周囲の宇宙マイクロ波背景放射(cosmic microwave background)にかき消されて現在の技術では観測不可能であるということだ。

 しかしこのホーキング氏の説明は後になって量子論と矛盾していることが指摘される。ブラックホールが取り込んだ物質と情報が最終的にブラックホールの蒸発によって全て完全に失われるという事態は、「情報は無くなりもしなければ作られることもない」という量子論の原則に外れることになる。そして「ブラックホール情報パラドックス」と呼ばれることになったこの矛盾に理論物理学者たちは取り組むことになる。




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